IoT 革命の到来
人類の歴史は、生活領域の拡大と生産性の向上の繰り返しでした。人間は、「火」を手にしたことで動物との住み分けを可能にしてきました。「水」を制御したことによって土地を有効に活用できるようになりました。「鉄」を制御できたことによって生産性を向上させるとともに、構造物の大規模化が実現しました。いま、「コンピュータ」と「インターネット」と「無線通信」を活用することによって、リアルタイムで低コストな情報交換が、人と人、人とモノ、モノとモノの間で行われ、急激な変化が発生しようとしています。この動きは IoT(Internet of Things、モノのインターネット)革命と呼ばれており、過去の産業革命に匹敵するほどの生産性向上が期待されています。過去において、生産性の向上は、人間に時間的余剰を生み出し、その時間的余剰が次の歴史のイノベーションを発見してきました。今回の IoT における生産性の向上は、物理的な制約の解放による面とともに、リアルタイムな情報交換に基づき、人間の思考についてもそのルーチン面については AI(Artificial intelligence、人工知能)によって解放され、人間の時間的、能力的な余剰が生み出されようとしています。
自動車は自動運転時代へ
この10年間のスマートフォンの大規模な世界的普及により、スマートフォンを構成する CPU、通信モジュール、GPS、各種センサーなどの価格が極めて安価になりました。それらは、IoT を構成する要素であったため、IoT の普及に弾みがつき、多くのモノに IoTを構成する機能が搭載されてきています。そのような背景のもと、自動車もIoTの主要事例として、IoT化が進展してきています。すでに多くの自動車に通信機能が搭載されていますが、今後は、ほぼすべての自動車に無線通信によるインターネット接続が実現してきます。また、情報交換、情報処理のリアルタイム性が上がったことにより、自動車の自動運転が開始します。過去、自動車は、人間の移動範囲、居住範囲を拡大してきた一方、人間による制御が必要となってきました。今後は、人間が制御することなく、移動という目的を達成することができるようになります。また、人間は、移動に自身の制御時間を使う必要がなくなるため、移動における時間余剰を生み出すことができるようになってきます。
都市機能のスマート化に伴う道路交通の高度化
すべてのモノが IoT 化していく中で、電力、ガス、水道、道路交通、公共交通などの行政が提供している都市機能も IoT 化し、相互に情報をやり取りしながら、最適なサービスの提供を行う事になります。これはスマートシティーと呼ばれています。とくに、自動車や二輪車が利用する道路交通や、バス、電車、地下鉄などの公共交通は、最適な組み合わせが実現し、マルチモーダル化していきます。また、自動車やバスなどの自動運転は、スタンドアローンで動くだけでなく、都市と協調して、交通渋滞のない、安全安心な社会が実現していきます。人間にとっての移動は、多大のコストを要する活動から、最低限のコストで実現できる活動へと切り替わってきます。
リッチコンテンツと次世代イノベーション
IoT 革命の進展により、前に見てきたとおり、人間は生活領域の拡大と、時間余剰を手にすることになります。それは、人と人との更なるコミュニケーションや多くのリッチコンテンツが生み出されることになるとともに、それらの消費の拡大につながり、充実した人間生活が実現していきます。例えば、自動車は、移動という目的と実現する自動車と、自己表現としての自動車、言い換えるとスポーツやアートを交えたコンテンツにもなってくるでしょう。それらの広い意味のコンテンツから、次の時代のイノベーションが生まれてきていく好循環が社会の発展であると思います。ゼロ・サムでは、そのようなIoT革命を技術面から支え、進展させていく事業を行っていきます。